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リノキシンニスについての解説

リノキシンニスについての解説
古典弦楽器製作家の塗料の発見LAPO CASINI 著Fiorenzo Copertini Amati
この本は古典ヴァイオリンニスの処方と作り方を発見したという1957年の、あまり普及していない著書です。「リノキシンニス」としての唯一の参考書となっています。
ストラディヴァリのニスが何であったかという論争の中で、「これがその答えだ。」という本があまりにも多く、これが全て今となっては間違いであるというのは、とても面白く不思議なことです。この著書も「亜麻仁油と松脂または硬質樹脂を使用した。」という情報から、何故かアルコールニスの方向に無理矢理行ってしまいました。
亜麻仁油はアルコールに溶けません。溶けるように加工したものがリノキシンだという、無理な設定でした。何故「テレピン油」を使用したオイルニスの可能性を見ていないのか。ここが疑問です。Spiritはアルコールと訳されますが、正確にはSpirit of Turpentineというテレピン油を指す言葉の略でもあります。つまり「揮発性油」を指します。
 それではストラディヴァリのニスが亜麻仁油と松脂のオイルニスだという根拠はあるのでしょうか。それは1957年以降の化学的調査で分かってきました。特に蛍光の色から大体の樹脂組成は分かります。
塗料しての処方は
"De diversis artibus"(On Divers Arts )Theophilus(1070-1125)
"Trattato Della Pittura"Cennino Cennini(1360 - 1427)Giuseppe Tambroni著
"De Mayerne Manuscript"Théodore Turquet de Mayerne(1573-1655) 
"Trattato sopra la vernice detta comunemente cinese"Filippo Bonanni(1638-1723)の1720年
"A treatise on painting" Mary P Merrifield 著
といった流れの中で16世紀のリュートやヴィオラダガンバの楽器に使用された塗料がヴァイオリニスの基礎となりました。この期間の中でもアルコールニスというものはありましたが、オイルニスが使用されていたことはDe Mayerne Manuscriptからも分かります。
特にボナーニやアルベルト・ギドッチ、ジェナーロ・カンテッリなどの著書での図解、グリークピッチの使用は亜麻仁油ではなくて樹脂を熱加工して、エステル反応させる製造方法を確立しています。何故アルコール溶解性のリノキシンがストラディヴァリ時代のニスであるという確証、裏を取らずにこの本を書いたのかは謎ですが、実際問題としてこの間違ったニスでも一流のヴァイオリンとして数多く出回ってしまったということは事実です。これは、フライの硝酸テレピン法とマイケルマンのレーキ型オイルニスの間違いと同様です。推測と思い込みの産物です。
しかし、このリノキシンという物質について弊社の名前にも使用しているので、誤解の無いように物質の化学的な説明をしたいと思います。
亜麻仁油は乾性油で空気中の酸素により酸化し、架橋して固化します。生亜麻仁油の場合塗布膜が薄ければその膜はしっかりと固定されます。厚いと中まで酸化せずに柔らかいものになります。「リノキシン」とは本来亜麻仁油が固まった固形物のことを指します。固まってゴム状になったリノキシンを、アルカリ加水分解して酸で中和しても使えるアルコール可溶性リノキシンにはなりません。回収すら困難です。アルコール可溶性リノキシンを作るには、ゴム状リノキシンをさらに酸化させて固いゴムを、挽き肉機(ミンチャー)やパスタ用ローラーで粉砕すると、削り節のような状態になり酸化させるとスポンジ状になります。この状態まで酸化したものをアルカリ加水分解して酸で中和析出させます。
私はこの方法のリノキシンをリノキシンMとして最初作りました。色は茶褐色で不透明です。粘稠なペースト状です。全てアルコールに簡単に溶けます。私はどの程度、エステル結合を加水分解すればアルコールに溶けるようになるかを調べました。結果は約半分量のエステル基を加水分解したものはアルコールに溶けました。これをリノキシン50としました。この性状はほとんどリノキシンM見かけに変わりはありません。アルコールに溶けなくなる限界はエステル基40%程度です。しかし全体の亜麻仁油の塊の酸化状態でこの数値は変わってきます。
アルカリ加水分解のアルカリは苛性ソーダ(NaOH)でもソルベイソーダ(炭酸ナトリウムNa2CO3)でどちらでも結果は同じです。酸中和に使用する酸はできれば塩酸が好ましいと思います。硫酸や硝酸が残った場合、加熱により二重結合に硫酸化や硝酸化が起きることがあります。
リノキシンはアルコールに長期浸漬すると溶けるというのは場合によっての話ですが、酸化の低い塊では長時間アルコールに浸漬するとエステル交換が起こって軟化し、溶解します。酸の存在では起こりやすいのですが、出来た固体リノキシンのアルコール溶液は塗布して使用することはできません。膜に付着性と平滑性がなく塗料として使用できませんでした。(写真 塊状リノキシン)

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