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天然樹脂の溶ける、溶けない

天然樹脂の溶ける、溶けない

オイルニスもアルコールニスも溶剤として、テレピン油またはエタノールに溶けることが必要です。液体の塗料で無溶媒というのは理想です。塗布した厚みと同じ硬化膜の厚さが得られることと、一回で塗装が済むというのは理想中の理想です。溶剤の役割は適度に希釈することにより、平滑性や下地とのなじみを良くしています。マニラコーパルはエタノーに溶解しますが、完全には溶けません。コーパルをテレピン油に溶かすためには、コーパルとテレピン油を還流する必要があります。図を参照。還流とは、その溶媒の沸点で維持しながら、溶質となる樹脂を溶かすので、溶解に常圧では最大の運動エネルギーが使用できます。そして溶かしたマニラコーパルの写真です。ランニングはしていませんが、少しは熱による変性があります。熱で溶媒のテレピン油(αピネン)も少し重合します。その結果透明に溶けた状態になります。これは室温から50℃程度では溶けません。琥珀(アンバー)はエタノールにもテレピン油にも溶けないのですが、エタノールに長く浸漬して放置すると部分的に溶けます。

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メディウムとオイルニスは本来同じものですが、ヴァイオリンのオイルニスは絵画のメディウムの中で適した処方を使った流用です。コーパルや琥珀のランニング樹脂は、メディウム用として亜麻仁油や胡桃油と反応させます。決して単独または、処方の中にただ溶解して使用しないでください。これは「中間材料」でオイルとエステル交換して初めて使用可能な製品となります。ランニング製品はあまり正しく使用されていないみたいです。またランニング琥珀の内容を疑う記述がwebにありましたので、明言しますが、弊社のランニング琥珀は純粋に琥珀のみを使用しています。100%品です。なおランニング処理で30-40(琥珀とコーパル、サンダラック)コロホニウムで50%の量が分解して減ってしまいます。またこのランニング技術は、14-19世紀ぐらいの技術者は当たり前のように使用していた技術です。

図 還流「フィーザー 有機化学実験」より

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"Imprimitura doratura"の販売 

"Imprimitura doratura"の販売 
インプリミチュラ・ドラチュラGolden Primerは金色の下地塗料です。
長い間試作して試験してきましたが、販売することにしました。オイルニスの自社としての「システム」があった方が良いという判断です。

材料としてアロエとルバーブの根を選択しました。アロエとガンボジ、アロエとサフランという処方はDe Mayerne,Filippo Bonanni,Angelo Maria Alberto Guidotti,Genaro Cantelliらの方法を復元してみました。ガンボジは強い黄色が特徴で光退色には強いのですが、毒性があります。サフランは価格が高く光にはあまり強くありません。ルバーブ根は食用や漢方に使用しますので、毒性は問題ありません。黄色はガンボジよりやや弱く、光には強いということで採用しました。
製品はアロエとルバーブ植物エキスを、還元してエタノールで抽出し、濃縮するという手間がありますので、価格はやや高くなります。
使用方法はプライマーとして最初に塗装します。これはアルコール性ですのですぐに乾燥します。また親水性も高いので、膠目止めの代わりを兼ねています。
この上に、ヴァイオリンヴァーニッシュ・コロホニウムを塗装していきます。
下地の着色により、重みのある塗装色になります。

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"A Treatise of Japanning and Varnishing" John Stalker & George Parker

A Treatise of Japanning and Varnishing
John Stalker & George Parker
1668年 英語
この本は日本題「漆への憧憬」ジャパニングと呼ばれた技法 井谷善惠訳
が出版されています。

Japanningの訳語「假漆」とは仮漆つまり漆の模倣という意味です。「ヴァーニッシュ」と訳されますが、ヴァーニッシュは元々ヨーロッパ、中東でも昔からあった技術です。それは主にオイル系でした。ビザンチン(東ローマ帝国)文化での装飾の技術はオイルニスとしては完成したものでした。これらは16世紀には文献上で"China"「チャイナ」とも呼ばれていました。陶器光沢の意味です。
漆は古来起源前から中国では、弓矢甲冑などの武器に使用されてきました。
私は少年時代、正倉院の中を見ることがありました。不思議に思ったのは、螺鈿細工のパーツや織物の糸などが、御物として知られる工芸品の10倍以上の数が作れるほどの、予備の原料が所有されているということでした。つまり技術輸入していたわけです。
象眼、蒔絵は漆を使用した美術として発展してきたわけですが、17世紀のヨーロッパで漆器の需要に対応して模倣の漆技術を使用したという「模倣の技術」という話です。
しかし、この歴史背景は13世紀頃からオスマントルコ帝国の勢力が強くなり、陸路で輸入できなくなったインドの生産物を、遠回りして船で運ぶ大航海時代になりました。そしてすぐに南北アメリカ大陸に到達し、アジアを含めて世界は一周でき、ほぼ今と同じ生産物が手に入るようになりました。アルコールニスの原料はこの航路開発の成果でした。
一方、ビザンチン文化からイタリア半島に受け継がれた、オイルニスは原料が松脂からコーパルへ変わっていき、その結果ヴァイオリンニスのオイルニスは衰退していきました。楽器は美術品と違って音が命ですので、当然音の追求として失敗の少ないシェラック系と変わってしまいました。ここはひとつ大きな問題点です。正しいオイルニスが明確に伝わっていたら、このようなことにもならず、復元に苦労する研究者もいなかったと思います。

ジャパンゴールドサイズとは漆で金箔を接着する代わりとして、コーパルと亜麻仁油のオイルニスを使用する技術ですが、この著書ではアルコールニスで接着しています。
この著書の内容はニスの作り方ではなく、使用方法を書いたものです。
オイルニスの作り方は載っていまいすが、方法は間違いです。このとおり行っても成功しません。この頃のオイルニスは黒ニスと云ってアスファルト、コーパル、亜麻仁油とリサージが主成分で、それに対し白ニスはアルコール性です。
たぶん、市販の黒ニスが手に入ったので、これについては詳しくは述べていないのでしょう。この本では「アニメ」と「コーパル」は別のもので「ベンゾイン」は「ベンジャミン」となっています。アニメの本質は今では不明です。これはコーパルは化石コーパルを指して、ヒメナエアの木から採れる樹脂は無職透明で、これらを区別していたという説があります。
漆の模倣ではなく「今ある手持ちの技術での作り方」というべきでしょう。
ジャパンの語は当時は誰も行ったことのない国の名前ですが、それよりも鏡面の作れる技術としての用語でした。
漆は蛍光不活性なことと、三次元架橋するので音の伝達は位相がずれて、理想の西洋楽器には向きません。万能ではないことと、文化としてその国の感性というものが、大きく左右するということもあります。假漆と漆は全く別なものです。
この本の内容は「使い方の解説」としては丁寧で、同じ内容の著書は他にありません。処方的には全く興味はありません。日本題にはいささか不満はありますが、訳としては完璧です。

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アロエの「金色下地」の作り方2

アロエの「金色下地」の作り方2
"doratura imprimitura"アロエの「金色下地」を前記のように作ります。
砂糖ではなく亜硝酸ナトリウムやその他の還元剤でも色はオレンジに変わります。
アロエはエタノールに溶かしてそのまま塗布すると、薄い茶色です。還元して黄色になってきます。オイルニスをアロエで着色することはできますが、これは前に述べたように蛍光が暗くなります。従って下地としてアロエを塗布して、上にコロホニウムオイルニスを塗装します。
できあがった還元アロエを濾過したエタノール溶液は5倍以上濃縮します。
試験板に塗布しながら金色の出来を見ます。2-3回塗りでオレンジ色になれば、できあがりです。
濾過は写真のように漏斗の下を切って、瓶に直接置いています。スペースをとらないための工夫です。
アロエの金色下地を2回塗布します。
この上にヴァイオリンヴァーニッシュ・コロホニウムを塗装していきます。

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