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アルコールニスについて3

アルコールニスについて3
ヴァイオリン用のアルコールニスに関して、いろいろと不明確な事や疑問があると思います。
1.ヴァイオリン用アルコールニスの歴史
アルコールニスがヴァイオリンに使用される前にもアルコールニスは存在しましたが、サンダラックやアニメ(コーパル)マスティックが主成分でした。この時期のアルコールニスは乾燥が遅く膜の硬さが直ぐには出ませんが、経時的にかなり硬くなります。
そしてひび割れが出ます。
 18世紀の中頃からGomma Lacca即ちシェラックが使用されるようになり、作業のし易さは大幅に改善されました。
 当初アルコールニスはオイルニスの代替え品でした。Japanningには二つの手法が元々あったのですが、ヴァイオリンについてのみ云えばアルコールニスはオイルニスの「代替え品」です。しかし、シェラックニスは音質も良く色作りのし易さ、つまり表現のし易さから重宝され、すでに250年以上が過ぎました。
オイルニスは下地に染みこむことが弱点で、染みこまないで表層でニスが留まる手法を16-17世紀のヴァイオリンニス職人は持っていたのですが、これについては別の話となります。つまり、下手にオイルニスというよりはアルコールニスの方が音的に失敗がないということになります。
2.アルコールニスの作り方について
アルコールニスはシェラックが主成分ですが、シェラック単品では何故いけないのでしょうか。音に関してもシェラック単独はそれほど悪くはありません。良い方だと云えます。
シェラックは乾燥した状態では、ミクロに観察すると層状で鱗片状が重なっています。
この状態では層の間隙が埋まっていません。密度としてはバルク(完全な塊)より小さくなります。処方として何種類かの樹脂を組み合わせると、ポリマーブレンドのように比重が大きくなる組み合わせができます。リノキシンも少量でブレンド性に界面活性剤のような役割で結晶化や鱗片化を防ぎます。硝子状態となりバルク密度に近くなるのです。
 色付けでアルコールニスに適用するものは主に染料です。レーキ顔料や鉱物顔料はアルコールニスと反応(多分カルボン酸と多価金属の塩形成)して固まってしまうことがあります。クリアーニスにパミス粉末を入れて目止めにすることは私としては推奨していません。音についても無機物を通る音の経路と、有機物を通る経路の二つがあることは、位相として好ましくありません。

A Perfect Red 「完璧な赤」 2(コチニールをめぐる歴史)

A Perfect Red 「完璧な赤」
Cochineal(コチニール)について
この本はアステカやインカで使用されたコチニールカイガラムシを、スペインがメキシコのウチワサボテンで養殖して巨額の利益を上げた16世紀の事情の話が主体です。
この本では同じ赤染色の色素として有力候補のラック色素はアジア産なので、インド経由で輸入されましたが、しかし、赤く染める染料としては色が定着しにくく鮮やかさも劣るのでコチニールには及ばなかったとしています。
コチニール、ケルメス、カルミン、ラック色素、これらはすべてカイガラムシの分泌物由来の赤色素を指す言葉です。カーマイン(Carmine:カルミン)とクリムゾン(Crimson)は元々同じ語源で、Kermesのことです。Kermes Vermilionとも言います。
「赤」指す単語にはまた、スカーレットScarletとヴァーミリオンVermilionがあります。深紅色Crimson、緋色Scarletと朱色Vermilionと日本語では訳されます。
ヴァーミリオンはvermiculm(ラテン語の小さい虫)が語源です。
ケルメスKermesはアラビア語の虫から採れる赤Kirmizが語源です。
カイガラムシの種類によって赤の色に違いがあります。古くはポーランドケルメスやアルネニアレッドといったケルメス系の赤色素が使用されていました。それぞれポーランドカイガラムシやアルメニアカイガラムシが存在したのです。
これに対し大航海時代前のヨーロッパやビザンチンでは西洋茜を赤色に染める手段として使用していました。マダーと灰汁(アルカリ)錫媒染による定着です。
しかしこれはあまり鮮やかではなく、作る度に色が異なる製造上の難しさもありました。
最初に作られた米国の星条旗の赤は、茜とコチニールで染めたということです。

実際の染色ではコチニールはややクリムゾン色に、西洋茜はやや朱色に染まります。
これに対してラック色素は薄いピンクになります。すおう、ブラジルウッド(ペルナンブーコ)の方が鮮やかに染まるでしょう。ラック色素はアルコール可溶性ですが、水に対してはそれほど溶けません。

ストラジバリの色はコロホニウム亜麻仁油のオイルニスに、少量のコチニール亜鉛・パープルを加えたものです。これは分析結果ですが、マダーを使用していないところが意外です。これはベースの色を生かして、必要最小限の顔料で赤を得るということで合理的な処方です。
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