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ストラディバリのニスと下地

以下は宮坂力先生の「バイオリンの至宝 ストラディバリの謎に挑む」のストラディバリのニスについての原稿から結論部分を抜き出してみました。
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下塗り層も油性であった可能性が高まった。また意外なことに、つなぎ剤としてよく使われた卵白、ニカワ、蜂ろうなどのタンパク質成分や防虫のための特別な添加物なども下塗りには見つかっていない(逆に,Strad 以外の楽器には見つかっているとしている).Sandarac,Mastic, Shellacといった天然木から抽出した着色用の樹脂も今回は見つからなかった。
また,ブラックライト照射でも仕上げニスが黄色に発光したのに対し下塗りはほぼ白色であったことから、油が固まった単純な層であった可能性が高い。

パリの音楽博物館の化学者Echardとバイオリン製作者のSoulierは,博物館所蔵の1690年から1724年にかけて製作された5台のStradの本体から信頼できる部分のニスをサンプリングし、X線分析のSEM/EDX,ラマン分光法などを使ったはじめての分析の結果である
1.下塗から上塗りのニスは一般的オイルがベースであり、ニスの組成は特殊な成分を含んでいない。
2.下塗りは木の表面から0.6mm程度の深さに浸み込んでいて、松脂の成分が含まれるが,そのほかの樹脂や無機物は含まれない。
3.仕上げニスは松脂のほか, 鉄酸化物などの無機物とコチニールを含む。後者はアルミニウムの化合したレーキとして存在する。
黄金期のStrad(1720年以降)のニスは朱色であり、鉱石の辰砂や鉄酸化物を顔料に用いた可能性がある。
4.ニスにはタンパク質類(卵白, ニカワなど) 琥珀や蜂ろうなどは見いだされない。
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以上引用

以上から分かることはニスがコロホニウム/亜麻仁油のオイルニスであり、着色はコチニールレーキと酸化鉄を含んだ鉱物顔料である可能性が高いということです。
これは私の主張するコロホニウムのオイルニスをできるだけ、赤く制作してベースとして、この上に、紫のコチニールレーキを少量添加したコロホニウムオイルニスを塗布するだけで赤い色は再現できるということです。コチニールレーキはアルミニウムということですが、コチニールのアルミニウムレーキは深紅で、亜鉛レーキは紫です。
どちらかというと亜鉛レーキが有利ではあります。
黄色の発光はコロホニウム/亜麻仁油のオイルニス。白色は亜麻仁油であると思われます。
ここが一番の問題です。まず最初のシーラーとも云える下塗りをどうしたのか。ここに一番大きなポイントがあります。ストラジバリ以外で以後のオイルニスは下地に、バーントシェンナーやゴールドイエローのオーカー(ともに酸化鉄を含む)やパミスなどのフィラーを入れたシーリングをしています。この無機フィラーは初期のストラディバリではこれが殆どありません。
音の観点から言いますと、実は木口の空孔はオープンで何も埋めない方がクリアーな音にはなるのですが、製作家としては全体の塗装のバランスと平滑性から、ここはしっかり目止めしたいところです。理想的には薄く無機物なしで、それもオイルニスの組成と同じ物を木口にシーリングしたいところです。

無機物顔料をオイルニスに混ぜた処方はImprimitura, doratura,mineral......として製品となっていますが、いずれも蛍光は暗く音質にもマイナス要素が多いものです。
ここの問題の解決がヴァイオリンの音を左右することになります。

表板と裏板の木目に平行な部分は下地処理にはあまり苦労はしないが、垂直に近い端の部分の処理は、これといった良策はありません。ストラディバリはどうしたのでしょうか。
これは分析の方法が分からない以上、なんともいえません。