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アルコールニス

アルコールニスに対する最近の私の見解です。
まずアルコールニスとオイルニスの違いですが、元々はオイルニスが主流でした。
1700年代になってGomma Laccaシェラックがヨーロッパに流通するようになりました。
塗りやすく、音質も良い材料なので、それまでのアルコールニスの処方はサンダラック、マスティック、アニメ(コーパル)とヴェネチア・テレピン(現在のものとは異なる)を酒精エタノールに溶かして使用していたアルコールニスに、シェラックを足して使用しました。その結果アルコールニスが普及してオイルニスの元の処方、製法も分からなくなっていきました。同時期にオイルニスはマルタンヴァーニッシュとしてコーパルを主成分として家具で発展していきましたが、元々のオイルニスはコロホニウム系です。

アルコールニスは当初オイルニスの代用品であったと思われます。しかし、優れた利点もあったので改良されヴァイオリンにとても適した処方が作れました。
間違ったオイルニスを使用するよりは、失敗のないアルコールニスで作る方が速く良いものを作れたというところでしょうか。
戦後1960年代から、ストラジバリの頃のニスが何であったかの論争と研究が進み、赤外分光やX線微量分析の結果も出てきました。そしていろいろな情報からオイルニスの復元が行われてきました。

アルコールニスとオイルニスの両方を作り、研究することでどちらの共通点と違いがはっきり分かります。
ニスの構造として乾燥し硬化した断面は理想的には、空孔のない密度の高い断面でなくてはならないのですが、理想通りにはなっていません。たいていの場合空孔の多いポーラス状態か鱗を重ねた鱗片状態になつています。
これは溶剤が速く揮発していく樹脂の方が顕著です。揮発を遅らせることである程度密度の高い膜を作れます。アルコール性樹脂はこの点やや不利です。
アルコールに溶けやすい樹脂は揮発が遅く、溶けにくい樹脂は揮発が速いのです。
シェラックはやや溶けにくい樹脂だと云えます。密度は樹脂を何成分か組み合わせることで、密度が上がる場合があります。経験的には界面活性に似た流動性の樹脂を少量加えることで、密度を高くできます。エレミやリノキシンがそれにあたります。
ベンゾエは逆にポーラスを作りやすいので、単独では使用できません。膨張性樹脂と表現することもありますが、収縮が足りないと言った方が適当です。

HPを更新しました。

HPを更新しました。
http://www.nlinoxin.co.jp/index.html
旧HPは/index.htmでしたが、htmlになりました。
通常のブラウザでは読めるはずですが、読み込めない方は
上のURLに末尾を変更してください。


グラス・ミューラー

グラス・ミューラー
顔料をオイルニスに練り込む「練り棒」のグラス・ミューラーは写真の左は長さ12cm,直径5cm。
右は長さ6cm,直径5cm。
右の小型を販売します。1個5000円と高いのですが一つあると便利です。
曇り硝子の板が必要ですが、硝子屋さんで50cm角に切ってもらいます。
縁をサンドペーパーで滑らかに落として使用します。
注文してから輸入しますので10日ぐらいかかります。
必要な方はご連絡ください。
glass-muller01.jpg

楽器と塗装1

音響的な音への影響とは、発生した音を忠実に伝達しているかということが、まず第一です。箱と塗料の部分を考えると現代のピアノはまず完全にこれに反しています。
ピアノは弦から出た音と反射した音を聴いている楽器だと云えます。
塗料の影響はマイナスです。何も塗らない方が良いという意味です。しかし出力された音自体が大きいのでゴムの箱に閉じ込められた、弦楽器という最悪な状態ではありません。
ヴァイオリンは状況が違っています。箱は木材でできています。弦の音を構造で増幅する役割があります。
ヴァイオリンを考えるとき、歴史的にその前の段階の楽器、ヴィオール、中世フィドル、レベック、などさかのぼってみると音の違いは歴然としています。ヴィオール、中世フィドル、レベックの時代にシェラックは使用されていません。レベックあたりになると塗装してもしなくても大して音に変化はありません。
レベックはくり抜き胴で表に平面のスプルース板を貼った楽器で、音は小さく響きもありません。私はこれらの楽器を実際に作ってみました。塗料をシェラックやオイルニスに替えてもあまり変わりませんでした。中世フィドルは平面スプルースの表板と裏板に弦を貼った楽器です。
mediebal-fid.jpg
いくらか音は大きくはなりますが、駒が大きく高く弦から板への距離があり、音が楽器へ伝わるのは駒を通しての振動がほとんどを占めています。次の段階のヴィオールは今のヴァイオリンと構造は似ています。表板も局面です。エンドピンの代わりに支柱があり、これにテールピースが引っかかっている構造です。むしろこの方が自然です。現代のテールピースのワイヤーまたは金属、カーボン素材の止め方はオーディオ的にはかなり影響します。
ヴィオール、中世フィドル、レベックの時代にシェラックは使用されていません。
レベックあたりになると塗装してもしなくても大して音に変化はありません。
何故ヴァイオリンに至って塗装が必要になったかを考えます。

楽器の音について-過去のblog分をまとめて

2013.2.9楽器の音
これまでのニスの経験則からは楽器塗料の条件として、
1.エントロピー弾性を持つものは良くない、つまりゴム、ウレタン弾性です。
ここで「音が良くない」という意味は音のエネルギー自体が損失する。つまり音が小さくなることと、弾性体に吸収された音の波が時間遅れで放出される「位相のズレ」これが起こるという意味です。
2.結晶化を避ける。これは結晶になると弾性を持つからですが、単一分子構造の天然物は規則的に並ぶことがあり得るという意味です。これを他の樹脂と3成分以上にしてガラス状態にして防ぐのです。ガラス状態は液体と同じですから、リノキシンを添加すると木目が偏光するのはこのためです。単にオイルを塗ってもこの現象は起こりますが、これは液体だからです。固まるとこの性質は変わります。

楽器の構造としての音の影響は
1.平行面を避ける。内部で平行な面にならないようにして音の滞留を防ぐのです。ヴァイオリンは曲面と曲線で構成されています。
2.垂直、直角な部品を避ける。これも音の逃し方でうまく放出できます。
ヴァイオリン製作で中の部品は角を落としているはずです。
3.音のループする機構を避ける。ループで生じる音の位相ズレです。
エレキギターでは逆にループする現象を奏法で使用しますが、これは特殊例です。
4.楽器の端末での音をうまく逃がす。放出の仕方です。ヴァイオリンの渦巻きスクロールにする理由はそこにあります。渦巻き部分のニスは厚くならないようにするべきだと聞きました。最後は尖って終わった方がより良いらしいのですが。
5.木材の材質を選択する。これはタップで叩いてある程度分かります。黒檀はどれも良くないです。抜けの良い音がするのが理想です。アフリカンウッド(グラディナラ)、ココロボ、紫檀の一部などです。要するに木琴にしたら良い音かということです。軟材ではスプルースが良いということです。これも個体差を選ぶことです。
6.金属部品を使わない。これは少し困ります。弦自体金属の場合があります。ヴァイオリンはうまくすると金属なしで作れますが、ギターは厳しいです。ペグをリュート式にする実験もやってみました。金属ペグよりは木製のヴァイオリン方式の方が良いですが、チューニング地獄になります。
目止めのパミス、トリポリ、砥の粉などの鉱物粉体はとにかく良くないようで。
石英よりはガラスがましなようですが。
あとにかわがダメとなると使うものが無いのですが。
木材の接着面を正確にすることでね使用量を極力少なくというところでしょうか。
前提としては木工がしっかりできていて、隙間やニカワ溜まりがないことですが。

2013.2.8 古いモダンピアノ
チェンバロを制作しているYさんの仕事場に行ってきました。
鍵盤から弾弦機構にあたるメカニックを音質第一に見直し、また板と内部構造も全て見直しということでした。
仕事場に置いてある古いドイツ製のピアノはGebruder Knake Munster(uはuのウムラウトÜ)
音は良いです。アップライトは珍しいらしいのですが、シェラック仕上げで和音が素晴らしい。このピアノは部分的につき板張りですが、同じメーカーのグランドピアノは木彫を施した豪華なものが多いようです。1800年代末期でしょうか。
gebruder-knake2.jpg
gebruder-knake1.jpg

2012.5.9
ヴァイオリンニスと音
この時代のシェラック塗装かマルタンニス(オイルニス)のものはとてもいい音がします。
樹脂と音に関してMartin Schleskeというヴァイオリン研究家、制作家のHPです。
http://www.scribd.com/doc/51135086/Schleske-%E2%80%93-Empirical-Tools-in-Contemporary-Violin-Making-Part-I-Analysis-of-Design-Materials-Varnish-and-Normal-Modes-Monteverdi-Corelli-Torel

制作家としてのHPは
http://www.schleske.de/en/our-research/handbook-violinacoustics/violinfinish.html
音波の伝達速度と位相のズレに関して理解できると思います。
img_0AF3N7421.jpg

2011.12.12塗料と音
ヴァイオリンの目止めに亜麻仁油を使用するという記述をよくみかけます。
結論から言いますと、亜麻仁油は音の劣化が著しくNGです。
亜麻仁油は楽器用としては使用しない方が良いと思います。これは亜麻仁油、桐油に云えることです。亜麻仁油の硬化物が三次元網目構造なので、弾性を持っています。(ゴム状ということです。)そのため音の波を吸収して、また放出する際に、音の波の遅れが生じます。直接の音の波と遅れた波の重なりが「位相のズレ」を生じて音が悪くなるのです。まとめて云えることは「ゴム状の樹脂は音が悪い」ということです。